建築石材事例014-大理石の彫像の復元-

△月△日”繕い”は”補修”の謂い…。
いつもは汚れを主とした事例ですが、今回は「壊れてしまった石の繕い」とでも申しましょうか。
割れたりほころんだりした石をどうにか元に戻したい、というお施主様の切なる思いに応えるケア事例2編です。

▼その①
今回は大理石の彫像です。
ご依頼のご夫婦がイタリアを旅行された時の記念の品です。
事情をお聞きすればご夫婦は「年甲斐もなく夫婦喧嘩をしましてね…。
家内がこの台座を落っことしてしまったんですよ」と、何度も手を額にかざしておられます。
「まぁ、商品としてはね、どれほどの価値があるものやら知れませんが、とにかく私たちの記念の品ですからね…。」
時の流れを懐かしむようなその面持ちに、私も出来る限り復元して差し上げたい、とチャレンジさせて頂きました。

優美な彫刻ゆえの独特の姿からくる不安定さ。
壊れた一つひとつのパーツを繋ぐ”かすがい”の位置を見極めるのが困難でしたが、何とか原型を留めることができ、修復を完了しました。
取り戻したありし日の姿に目を細めるご夫婦。
この小さな彫像が、これからもずっと”お二人のかすがい”になるようにと、もとの台座にお返ししたのでした。

施工前施工後
施工前後▲

▼その②
都市型ホテルのエレベーター前の大理石床のケアです。
エレベーターホールといえば、象眼など綺麗にデザインされた床石などが目に留まりますよね。
エレベーター待ちの手持ち無沙汰に任せて、ホールの石目地の段差の感触を確かめてみたりしませんか?
「女性のお客様や高齢のお客様などがよくひっかかるようで…。特に雨の日のお客様なんか、お持ちの傘でわざわざつつかれるのですよ!」と、 ご依頼のフロアマネージャー氏は苦笑いされました。

今回は場所柄、閉店後の深夜作業となりました。
こうした場合によく使われる補修用材<黙(だんまる)>を主体に、剥がれの深い箇所には硬化の早いボンドを利用しました。
最終工程の色あわせでは、まるで絵画の仕上げを思わせるその筆先に、”ふっ”と幼い頃やぶれたズボンを夜遅くに繕ってくれた母の面影を思い出していたのでした。

※石材呼称は、”御影石”、”大理石”、”ライムストーン”等の通称に従います。

▼施工前後
ドレストン施工後